御曹司とおためし新婚生活
東雲部長は昨日から京都へ出張に出ている。
予定ではそろそろ帰社する頃だけれどと考えながら、私は東雲部長の連絡先を表示させた。
コール音が数回鼓膜を震わせた後、東雲部長の声が機械越しに聞こえる。
『向日か』
「お疲れ様です。今、大丈夫ですか?」
『本社に向かって歩いてるが、何か問題か』
多分、声色で感じ取ったのだろう。
私は「はい」と返してから、状況を報告した。
『企業の名はわかるか?』
「エメ・ジャパンです」
『……鳳の兄が経営している会社だ』
「えっ!?」
株式会社エメ・ジャパンは、大手アパレルメーカーで若者を中心に人気のあるブランドを展開している企業だ。
鳳さんが御曹司だという話は知っていたけど、エメ・ジャパンの経営者が、鳳さんのお兄さん……。
ふいに、鳳さんが何度か見せた不敵な笑みを思い出す。
もしかして……わざとぶつけてきた?
いや、まさかと思うのに、何故かそんな気がしてならない。