御曹司とおためし新婚生活
ゆずちゃんは私と鳳さんを交互に見る。
「何だかよくわからないけど、この子がこんな顔するってことは、相当ね」
心配そうに口にしたかと思えば、今度は厳しい目を鳳さんに向けたゆずちゃん。
彼女は「鳳さん」と真面目な口調で声をかけると……。
「亜湖を傷つけたら……マジでぶっとばすからな?」
最後の方だけ男に戻ったゆずちゃんに、鳳さんはハッと鼻で笑った。
「わーお、怖いね釜田君」
「“ゆずちゃん”よ! 亜湖、何かあったら呼ぶのよ」
「うん、ありがとう」
気にかけながらも手を振ってゆずちゃんがスタジオを出て行く。
扉が閉まり切るのを確認すると、私はフレアスカートの裾を揺らし鳳さんに向き直った。
「新作発表会に借りていた会場がキャンセルされました。ダブルブッキングが理由です」
鳳さんは何も言わない。
肯定も否定もせず、ただ微笑みを浮かべて話に耳を傾けるだけ。