御曹司とおためし新婚生活
「相手企業はエメ・ジャパン。あなたのご兄弟が経営されている会社だと聞きました」
「東雲から、か」
返事はせず、私は話を続ける。
「単刀直入に聞きますね。これは偶然ではなく、故意ですか?」
「半分当たり、かな」
言いながら、彼は相変わらず薄く笑んだまま腕を組んだ。
「実は、兄貴んとこが借りる予定だった会場が火事にあったらしくてね。いつものところで頼めば良かったって愚痴を零してたから、アドバイスしたんだ」
どんなアドバイスなのかを問わずとも、鳳さんは僅かに笑みを深めて真相を連ねる。
「それなら、手土産でも持って交渉してみたらどうかって。なんならそこの女社長とは仲がいいから俺からもなんとなーく話しておこうかってね」
つまり、偶然から生まれた故意だと言いたいのだろう。
手土産というのは金銭が絡んでいるのかもしれない。
仲がいいというのも不健全なものなのではと予想して。
鳳兄弟の傍若無人ぶりに重苦しい息を吐いた。
「ひどい。うちの発表会にはあなたの作品だって関わってるのに」
「そうだね。だから俺も君たちには無事に発表会を開催してほしいよ。てことで、ここでひとつ提案」
私たちだけしかいないがらんとしたスタジオに、鳳さんの誘惑するような声が響く。