御曹司とおためし新婚生活


「亜湖ちゃんが俺のものになるなら、兄貴と社長に交渉してみるよ。どう?」


それは一見して希望に満ちた言葉だ。

でも、私は彼の言葉をしっかりとかみ砕く。

鳳さんは交渉してみると言っただけ。

キャンセルを取り消して、明倫堂の契約が継続になるという確証はない。

引っかかるものか。

自分の二歩ほど先に立つ鳳さんに、私ははっきりと頭を振ってみせる。


「結構です。汚い手を使う鳳さんには魅力を感じないし、こんなことする子供みたいな人をこれから先も好きになんて絶対になれない。何より、私は東雲部長のことが好きなので、彼の夢であり私の夢でもある明倫堂に喧嘩を売るなら私はあなたの敵になりますのでどうぞよろしく!」


畳みかけるように言い切った時だ。


「敵、か。いいなぁ、お前。こんな真っ直ぐで可愛くて面白い子に好かれて」

「……へ?」


お前、とは誰のことか。

この場にいない東雲部長へのメッセージでも呟いてるのかと首を傾げた直後、背後から靴音が聞こえて振り返れば。


「し、しのっ……東雲部長!」


走って来たのか、肩で息をしながら東雲部長が歩み寄ってきていた。


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