御曹司とおためし新婚生活
「待てと、言っただろうが!」
「す、すみません……」
き、聞かれていた!?
入って来たタイミング的に聞かれていた可能性はあるけれど、何より鳳さんが好かれて、って言ってた気がする!
ていうか言っていた!
でもまだ上司としてという言い訳ができる会話内容だろうと、跳ねる鼓動を落ち着けるべく息を吸うと、東雲部長は私の腕を引き、少し下がらせるように鳳さんと向き合った。
「おい、アホウドリ。お前の都合で周りをひっかきまわすのも大概にしろよ」
「彼女にも言ったけど、俺はアドバイスしただけ。動いたのは兄貴たちだ」
自分はやれと命令をしたわけではないのだと、鳳さんは笑う。
「でもまあ、それを利用するつもりではいたけれど、亜湖ちゃんはひっかかってくれなかったね。残念だな」
なんて言いながらも、鳳さんの顔には気落ちした気配は見られない。
飄々とした態度に、東雲部長も呆れたとばかりに息を吐いた。
「女なら捨てるほどいるだろう」
「そうだな。でも、亜湖ちゃんじゃないと意味がない」
東雲部長に向いていたたれ目がちな瞳が私の姿を捉える。
「なぜ、そこまで向日に拘る。本気には見えないが」
「そんなの、お前の心が動くからに決まってるだろ」
鼻で笑って、鳳さんは瞳孔が開いたかのように双眸を爛々とさせた。