御曹司とおためし新婚生活


「昔から、誰にも大して関心を示さず、感情もあまり表に出さないお前が、亜湖ちゃんに手を出すと怒りを露わにする。ずっとお前のそのすかした顔を崩してやりたかった俺としては、最高に面白いし、最高にいい女だ」

「……相変わらず面倒だな、お前は」

「引き出したい、暴きたい、違う一面を見たいと思うのはカメラマンの性だよ」


……なんというか。

二人の間には二人が紡いできた歴史があって、そこで何があったかとか、どんな思いを育てたかとかは当人たちにしかわからないものだけど。

二人のやり取りを聞いていて、ひとつだけ感じるのは。


「鳳さんって、好きな人には意地悪するタイプなんですね」


彼はきっと、東雲部長のことが好きなのだ。

だから、部長の感情が動くさまを見たくてたまらないのだろう。

私もそうだった。

東雲部長の笑みを見たいと思っていた。

いつの間にか、彼の特別になりたいと願っていた。

きっと鳳さんも、東雲部長の特別になりたかったのだ。


< 110 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop