曖昧なポジション
スプーンを拾うこともせず椅子に座ったまま、
前のめりでテーブルに肘を付いてじっとしていた。
物音を立てないように。
気配を消した。
早く、帰って。
何度も何度もインターフォンが鳴る。
まるで水沢に居留守を見透かされているかのようだ。
間隔を空けずに鳴り続くインターフォンは、水沢の苛立ちを表しているかのようで泣きたくなった。
こうして居留守を使い、水沢を拒否していることが正しい選択だとは思わない。
もっと自分に正直に生きる女性だったらば、水沢に想いを打ち明けて納得して前に進むのだろう。
このままじゃ、
私は止まったまま。
本当にこのままでいいの?
約束を自分の気分ですっぽかすような女になりたいの?
「こんなの嫌だ、」
もう自暴自棄でもなんでもいい。
立ち上がり、駆け足で玄関に向かう。
勢いよくドアを開けた私の目の前には、
不機嫌を通り越した、しかめっ面な水沢が立っていた。
怯むな、負けるな。
「なに、居留守使ってんの?」
「ごめん、寝てた」
平然と言い訳を述べると、水沢は溜め息をついた。
「洗濯物、干してから寝たわけ?2度寝?」
「……」
こうもあっさりバレた嘘。
このマンションに入るには正面玄関を通るわけで。そこからベランダに干された洗濯物を見たのだろう。