曖昧なポジション
「ずっと苦しかったの。届かない想いは膨らむ一方で。だから今日で終わりにしよう、って決めて。勇気を出して告白したんだよ」
「……」
水沢の顔を見れないまま、俯き加減になる。
見慣れた革靴ではなくスニーカーの水沢の足元を見ながら、先を続けた。
「大嫌いだけど、大好きだったよ」
たぶん、"嫌い"と"好き"は
紙一重なんじゃないかな。
再び扉を閉めようとすると、
「ナツミ、」
名前を呼ばれた。
いつも"おまえ"が中心で、
名字さえ呼ばれたことは少ないのに。
どうして、名前なの。
「ナツミ」
先程より、はっきり告げられて。
空耳でないことを確信する。
「これからデートしよ」
「……」
「俺はナツミとデートしたいんだ。第一、俺も暇人じゃないわけよ。せっかくの休日に、どうでも良い女を誘うわけがないだろう」
「え……、?」
「俺たち、両想いなわけで。お前が俺を諦める必要はないんだよ」
珍しく優しい声。
この暑さのせいで
私は都合の良い夢を見ているのかもしれない。