曖昧なポジション
「今日は私が払うよ」
毎回、映画代から食事代まで水沢が払おうとする。
男として当然の行為だと水沢は言うけれど、心苦しい。
「おまえに払って貰うなんて、そんなの考えらんねぇ」
「なんで?」
「せっかくのデートなのに。彼女に払わせるなんて無理」
いつもと違う言葉が返って来て、すぐに返答できなかった。
冗談だと受け流すことができる女になりたいのに、私はいつも真に受けてしまう。
「なに黙ってんの」
「いや、彼女とか………」
「照れてんのか」
エスコートの仕方から、女性の扱い全般に水沢は慣れている。
彼女という存在を今まで数えきれない程、傍に置いてきたからだろうけれど。
そんな水沢の世界と、私の世界は大きく違う。
映画館に異性と来たことだって、水沢が初めてなのに……。
「照れるのも可愛いけど、肩の力を抜けよ」
可愛い……?誰が??
「な?」
そう言った水沢は私の頭を撫でた。
目尻を下げた優しい目に囚われる。
「堅くならずに俺たちらしくやろう」
「何を?」
「恋人同士というものを」
「……」
恋人という甘い響きが、いつまでも私の脳裏に残った。