曖昧なポジション

映画の内容はそれなりに頭に入ってきた。



さすが名女優と呼ばれているだけある迫真の演技。



物語に没頭しているはずなのに、気を抜くと別のことを考えてしまう。



隣りに座る水沢は、集中できているのかな。



好きな女優が主役だという理由で選んだ映画は、甘い甘いラブストーリーだった。



もし私が同じ場面に遭遇したとしても、あんな可愛い台詞を言えるわけがない。



例えばさっきの告白、



好きだと言って抱き着けば、なにかが変わったのかな。



上目遣いで水沢を見れば、少しは良い雰囲気になった?





「水沢が好き」





小さな小さな声で呟く。



女優さんの台詞と被って、


掻き消されたであろう私の告白に、




――水沢が反応した。






目が合う。






「出ようか」



そう声が聞こえた時には、手を引かれて通路に誘導された。


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