曖昧なポジション
「身に覚えのねぇ話だ」
「もしかしてもう別れた?」
同棲の話しを聞いたのは確か、半年前だ。2人の関係が終わっていたとしたら……?
それでもタクシーから降りて女性を追い掛けて行ったのは事実。
「誰とだよ?」
「だから同棲している彼女とだよ!」
「……」
水沢は無言で立ち止まった。
「この間、タクシーの運転手さんも言ってた。知り合いの女性を見つけたから、水沢は途中で降りたって」
「同棲……タクシー……?」
とても難しそうな顔をした水沢を追い越した。
仕事で行き詰まった時に見せる表情だ。
誤魔化すつもり?
「言いたくないなら言わなくて良いよ。その代わり私のことを簡単に……かの、じょ、とか言わないで」
彼女なんて言われたら、無謀な恋と分かっていても期待してしまうから。
「ありえねぇ…くくっ、」
突然、低い声で笑い始めた。
今の会話で面白いところなんてあった?
笑い声をあげる水沢を振り返りながら、こちらの真剣さに気付いてくれないことに腹を立てる。
真面目に取り合ってくれないのか。
27歳にもなって、
改めて恋愛は難しいと、実感した。