大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「虹ちゃん、帰らないの?」
ぼんやりと百瀬さんを見ていたら、千尋から視線をわたしに向けた百瀬さんが首をかしげる。
それでふと意識が引き戻されて、ばいばい、とぎこちなく彼女に向かって手をふる。
そうしたら、百瀬さんはきれいな顔をふわりと綻ばせる。
だけど、その中に何か棘のようなものを感じて、私の中に小さな不安が生まれた。
くるり、と百瀬さんから背を向けようとしたとき、虹ちゃん、と呼び止められる。
それから。
「――朝比奈くんのこと独り占めさせてあげられなくてごめんね?」
まるで、甘い蜜をまとった猛毒の花の棘。
可憐に微笑んでそんなことを言われたら、ズキリと心臓になにか刺さって、目の奥もチカチカしてきて、平常心なんて保てるはずがなかった。