大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「…可哀想だから、一緒にいるの?」
「は?」
「水嶋くんに聞いたの、だいたいのこと。千尋は百瀬さんが困っているのを助けてあげて、それから責任感抱いて一緒にいるんじゃないかって水嶋くんが言ってた。私も、そう思う。…優しい、からね。千尋は」
「ちょっと待って、なんで虹が水嶋とそんな話してんの?いつ?お前、教室にはあれからきてないじゃん」
話をそらすみたいに、今はどうでもいい私と水嶋くんのことを眉を寄せながら聞いてくる千尋に、無性に腹が立ってくる。
理性なんて、昼下がりのお日様の下においてかれて、ストッパーはたぶん、もう、外れてしまった。
“怖い”なんて言われないように、変に思われないように、なんてそんなことを気にする余裕も今はない。
「水嶋くんはどうでもいいよ」
「どうでもよくない。水嶋はだめって、俺言ったよな?」
「どうでもいいんだってばっ。あのね、分かるかな。今、私は、百瀬さんのことを千尋に聞いてるの。これからもずーーーっと、助けてあげるつもりなの?百瀬さんが頼ってきたら?家族にもなれないのに?」
「………」
「水嶋くん言ってたよ。リストカットは、ビョーキだって。別に死なないって。百瀬さんは千尋によりかかってるんだって」
「虹、」
「お買い物に付き合ってあげたりして。そもそも髪型まで変えちゃって。千尋、何してるの?私にも、優しいもんね。千歳くんのことがあるから。百瀬さんは?リストカットが直るまでそばにいるの、千尋。私は百瀬さんのこと今日はじめてみたし、リストカットは実際にみてないけど、なんかさ、千尋も百瀬さんと同じで」
「……」