大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「はい、」
夕暮れ時のパラソルの下。
パイプ椅子に座って待っていたら、両手にクレープを持った千尋が、トッピングが豪華な方を私に渡して、隣に座った。
私が誘ったのに、俺はバイトしてるし虹の分もまとめて買ってくるから待ってて、なんて私の分まで買いにいってうんともすんとも言えない間に、クレープがうってる屋台に並びだした千尋に、私はおとなしく場所取りにつとめるしかなかった。
「ありがと、千尋」
「うん。それ食べていつもの虹に戻って」
「……うん」
千尋は、ツナの甘くないクレープにしたみたいだ。
じっと千尋が食べるのを見ていたら、食べる?って自分のクレープを私に寄せてきたから、首を横に振る。
自分の甘いので十分だ。
パラソルの下で、二人でクレープを食べる放課後なんて、はじめて。
夕暮れで、うるさい明るさを隠したみたいな空の色と、クレープの匂い。
幸せってこれのことなのかなって馬鹿みたいなことを急に思ったけれど。
千歳くん。
こんなんじゃ、たぶん、千尋には好きの気持ちなんて伝わらないよ。