大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
放課後、気まずさとか嫉妬の名残とか複雑な負の気持ちを抱えたまま、下駄箱にむかうとすでに千尋が待っていた。
イヤホンをして、壁にもたれかかっている。
誰もしゃべりかけてくるな、みたいなオーラをはっきりだしてるのは珍しくて、いつもなら女の子に絡まれていてもおかしくないのに、今日はひとりでぽつんと立っている。
だから、私は下駄箱に影に隠れないですんだわけだけど、なんとなく近づくのを躊躇ってしまう。
だけど、いくらイヤホンをしているとはいえ、人の気配を千尋は感じたんだろう。
ぼーっと前を向いていた顔が私に向く。
その途端、フラッシュバックするのは金曜日と今日のお昼の出来事で。
どんな顔をすればいいのか分からなくて、千尋の方に行くこともなく突っ立っていたら、千尋は困ったみたいに小さく笑った。
「帰ろ、虹」
突っ立っている私に近づいてきて、その手が優しく頭に伸びてきて、ゆっくりとなでた。
私はそれを拒むみたいに、千尋に「帰ろう」と頷いて、玄関へ向かった。