大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「虹、クレープ、今日も食べに行く?」
「……今日は気分じゃないかな」
「ん、わかった」
ご機嫌取り。
金曜日をやり直して、気まずさを解消しようとする千尋の魂胆が丸見えで、すごく嫌だ。
別に私の顔色をあからさまにうかがうとか、そういう気遣いを千尋はしないけれど、金曜日のことはやっぱり私だけじゃなくて千尋も気まずく思っているんだろう。
当たり前だ。
怒りながら責めながらすがった私と、それを置いていった千尋だもん。
金曜日の夜、もし千尋と会っていれば、もしメッセージを返していれば、こんな風に今気まずくなることはなかったのだろうけど、あの日の私はどうしてもそうしたくなかったし、今、その決断を後悔してるわけでもない。
いつもならできる他愛もない話もできない。
かといって沈黙も耐えられるようなものではない。
必死に話題を探せば、今日のお昼に千尋を購買で見かけた、ということしかないように思えてきて。
もっと探せば、新しいカーディガンを買った、とか、千尋が好きな映画の続編がもうすぐ公開される、とかくだらないけれどささやかで幸せな話題もあったはずなのに、このときはなんにも思い浮かばなかった。