大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
窓ガラス越しに、思わず指先で、とん、と弾いたら、水嶋くんは「ほしーの?」とガラスに身体をよりかからせながら聞いてきたから、こくんと頷く。
だけど、クレーンゲームは初心者な私だ。
とれるわけがないし、早々と諦める準備をこころの中ではじめようとしていたら。
「俺がとったげる」
「えっ、だめだよ、悪いよ」
「得意だよ俺、クレーンゲーム」
「でも、これは私がほしいって思ったものだし、」
水嶋くんから目をカーフィーに移せば、きゅるんとしたちょっと細長い瞳が私を求めているみたいに思えてきて、ますますお部屋にきてほしい気持ちは増すばかりだけど。水嶋くんに迷惑をかけてまでほしいかと言われれば我慢できる程度だから。
それなのに、遠慮する私にゆるい表情の水嶋くんは、カーフィーから視線を戻したときには、すでにお財布をだしていた。
「俺ねー、とれるもの自体はあんま興味なくて正直いらねーの。でも、とるまでが超好きなんだよね。クレーンゲームでなんかとりたい俺と、この変なコスプレしたカーフィーがほしい枢木ちゃんでしょ、そしたら、一石二鳥?って感じじゃん」
変なコスプレ、なんてひどいいいようは置いておいて。
そこまで水嶋くんが言ってくれるなら、私もこれ以上遠慮する必要はないかなと思って、頷いた。
「ありがと、水嶋くん。私、応援に徹する」
返事の代わりに、チャリン、と百円玉を二枚投下した水嶋くん。
その表情は、クレーンゲームに真剣になるかと思いきや、いつもと同じく少し眠たげでゆるいままで、それがなんだか可笑しかった。