大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「あ、これはいけたー」
水嶋くんは言っただけのことがあって本当にクレーンゲームが得意だったんだろう。
3回目の挑戦にして、クレーンはカーフィーを捕まえた後、そのまま落とすこともなく、目的の場所でアームをはずして。
ポス、と軽やかな音と共に、カーフィーは取り出し口に届いたんだ。
水嶋くんがうーんと背伸びをした後に、しゃがみこんで取り出し口からカーフィーをつかむ。
それから、私に差し出してきた。
フライパンを変な方向につかんでいるからカーフィーが逆さまになっていて、そういうところからも水嶋くんのとれたものへの愛着のなさがうかがえて、小さく笑いながら「ありがとう」とお礼を言った。
これからこのカーフィーがお部屋にくるんだって思うと嬉しくて、水嶋くんの前なのに、ぎゅっと少しだけ抱きしめてしまう。
それを見た水嶋くんは、ふ、と息をぬくように笑った。
「枢木ちゃん、俺いまなんかぐっときた」
「へ、」
「あんたのことかわいーなって思った。朝比奈の気持ち、ちょっと分かったかも」
「…お世辞はいいよ。それに、千尋は私のことかわいいとかそういうことは思ってないし」
「まー朝比奈はどうでもいいんだけどさ。俺はね、お世辞でかわいーとか言う相手には言うけど、枢木ちゃんには言わないんだよね」
「………、」