大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
なんとなく照れくさくて、というか居心地が悪くて、水嶋くんから腕の中のカーフィーに目をうつせば、彼は、軽やかな手つきで私の頭を掠めるようになでた。
カーフィーのうるんだ目までもがなんだか私を見透かしているみたいで、うつむいたら、「そろそろ出よっかー」なんて間延びした軽い口調で水嶋くんが私に言う。
「うん。…水嶋くん、これとってくれて本当ありがとう」
「いいよー、キッチンにでも飾りなよ」
「コックさんの帽子かぶってるから?でも、汚れちゃうからお部屋に飾る」
「枢木ちゃんの部屋に俺がとったものがあるなんてうれしー。俺がとりましたって、こいつの帽子にペンで書いといていー?」
「え、やだよ、それは!」
ふははー、と冗談を言った水嶋くんがゆるく笑って、ゲームセンターの出口に向かう。
今日の水嶋くんは、なんだかいつもと少しだけ違って、感じの悪さが半減されているというか、棘のある冗談をあまり言わないからか、今、楽しい、って素直に思えている自分がいた。