大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
駅前の少しはずれにあるファミレス。水嶋くんはどうやら駅前に詳しいみたいだ。
デザートが美味しいところがいいよねー、なんて言いながら、近くにあったファミレスを通り過ぎて、地図も何も見ずに今入ろうとしているファミレスまできた。
ガラスの扉をひらくと、リリン、と鈴の音が鳴って、店員さんたちが一斉に、いらっしゃいませーと言う。
水嶋くんに続いて、店内にはいったら、可愛らしい女の子が案内にきてくれた。
「いらっしゃいませ。お客様2名様でしょうか?」
「はい、」
「……って、え、宙(そら)くん!?」
突然店員さんが、水嶋くんを見て驚いたような顔をしたから、思わず彼を見上げると彼はいたって平然としていて。
「…えー、だれ?俺、さすがに一回関係もった相手は覚えてるけど、君と遊んだことはない気すんだけど」
「わたし、愛未の友達。宙くん、あのさ、まだ、愛未、君のこと好きなんだけど、…それでさ、なんていうのかな、君とそういうだけの関係?みたいなのが嫌だったらしくて、で強がってもう会わないって言っちゃったらしーんだよね、だからさ、――」
いきなり目の前で繰り広げられはじめた会話に、私は一歩下がってただただ吃驚して見ているしかなかった。
どうやら、店員さんは、というより店員さんの友達が水嶋くんと知り合いだったみたいだ。
女の子が話すトーンや表情からして、話している内容はあんまりいいものではなく。
きっと店員の女の子は、その友達のことが大切なんだと思う。
だけど、こんなところで話すことではないな、と思いながら、ぎゅっとカーフィーを抱きながら待っていると。
ちっ、と舌打ちの音が斜め前から聞こえたから驚いて、音がした方向をみる。
そうしたら、いつものゆるい表情をした水嶋くんはそこにはいなくて、不機嫌丸出しの彼が、店員の女の子に向かって冷ややかに口角をあげた。