大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「――だったら、何。悪い?」
「へ、」
予想外の答えに、もれてしまった間抜けな声。
目を見開いてしまう。
そんな私を前にして、千尋は、ゆっくりと瞬きをおとして、はー、と長く息を吐いた。
不愉快で、耳に残る、溜息だった。
どん底に落ちることもできずに、宙ぶらりん。
千尋が手をポケットに突っ込んで、目を少しだけ細めて私を見た。きれいな二重幅がほんのわずかに狭まる。
「いいよ、それで」
「………、」
「なんか、なんでもいいわ、もう。虹がそう思うんならそれでいいんじゃない」
適当な言い方に、むっとしたけれど、何も言い返すこともできなくて。