大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】












「千尋、本当に、動物園行きたかったの?」

「うん」

「じゃあ、もうちょっと嬉しそうにうさぎなでたら?」

「十分嬉しそうになでてるし」





結局、千尋はかなり眠たそうにしながらも九時きっかりに私を家まで迎えに来た。



ネイビーのロングTシャツをゆるくブラウンのズボンにいれて、久しぶりにみた千尋の私服は昔とかわらずおしゃれでよく似合っていた。
髪型はツーブロックに、いつもとは少し違って前髪は横に流していた。



私は散々悩んだあげく、花柄のワンピースに茶色のベルトをあわせて、それから髪はゆるくポニーテールにした。

可愛いって思ってほしい。
千尋はどんなのが好きなのかな、なんて精一杯考えてつくりあげた自分だから。




だけど、千尋は別に私の格好や髪型には何も言及することもなく、朝の少ししゃがれた声で虹、行こ、と言って、歩き出したから、少し不服に思いながら、でもよくよく考えれば千尋が私の外見に対して何か言ってきたことは今まで一度もないからそれは当たり前といえば当たり前のことだった。



電車をのりついで、動物園に着いた頃には、千尋のテンションも朝よりはましになって。


それで今、うさぎのふれあいタイムに参加して、ふたりでうさぎをなでているわけだけど、千尋の手つきがあまりにもぎこちないから、少し笑ってしまう。

うさぎのふれあいコーナーの看板をみつけて、「これ、いきたい」と言った私に、千尋は不自然な間をあけた後、「いいよ」と承諾の返事をしていたけれど。
もしかしたら、触るのが苦手だったのかもしれない。




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