大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
それから、クジャクやフラミンゴを見て、ライオンとトラに飼育員さんが餌をやるのを頑丈な檻の外から、千尋と二人で並んで真剣に観察した。
そうしたら、二人とも、きゅる、なんてお腹の音を立てて。動物がご飯を食べているところを見て、食欲がわいてくるなんて人間のくせに本能には忠実で、顔を見合わせて笑ったんだ。
まるで、恋人みたい。
想い合ってるみたい。
なんて、笑いながら図々しくて勘違いだらけのことを思ったのは、昨日とは打って変わっての晴れ模様の空と、センター分けじゃない千尋の前髪とか、そういうもののせいだと思う。
「はい、ベーコンレタスバーガーと、あとジンジャーエール」
「ありがと。あの、お金」
「いい。その代わり、虹は俺のバーガーに入ってるピクルス代わりに食べて」
「……分かったよ」
ベンチに座って、お昼ご飯を食べる。
ハンバーガー屋さんがあったから、二人とも意見が一致して、お昼はハンバーガーにした。
「…ピクルス美味しいのに」
「美味しくない」
「……おこちゃま舌だね、千尋」
「うるさい。はい、これ。食べて」
ハンバーガーのピクルスの部分を千尋はむぎゅっとだして私の口元にもってきたから、そのまま口をあけてかぶりついた。
花柄のワンピースにポニーテールで精一杯可愛くしてきたのに、ついついあんまり可愛くない食べ方をしてしまう。
だけど、千尋はそんなこと一つも気にせずに、私のかじった部分から、ぱくぱくとハンバーガーを食べはじめる。
間接キス、とか、食べさせてもらう、とか、そういうものにはあんまりドキドキが生まれない。
でも、私は確かに千尋のことが好きで、それがどうしたら伝わるんだろう、なんて思いながら、ピクルスで少し酸っぱくなった口の中にジンジャーエールを流し込んだ。
せっかく土曜日に特別なことができているのに、このまま終わってしまうのはもったいない。
隣に座って、ぺろりとハンバーガーを食べきって、私の手の中にあったジンジャーエールを遠慮もせず飲む千尋を横目に、あまりの意識のしていなさに落胆しつつも、頑張ろう、ってそう言う気持ちがなぜかこころの奥からわいてきた。
お昼ご飯を食べおわったら。
午後からは、少し頑張ってみようって。
幼なじみじゃなくて、ただの女の子として見てもらえるように。
言葉以外で好きを伝えられるような行動を自分なりにとってみよう、なんて、いつもの臆病な私が少しだけ眠って、前向きになれていることがなんだか少し誇らしかった。