大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
◇
「虹、そんなんで大丈夫なの?」
軽音部のステージ発表の休憩の合間に、心配そうに隣で聞いてきた美優にぎこちなく頷く。
時刻は11時。
あと3時間後には、告白大会がはじまってしまう。
朝五時に目覚めてしまうし、朝ご飯も喉を通らなかったし、正直今日がきた時点で、平常心のへの字も私は持ち合わせていなかった。
今だって、軽音部の発表をぼーっと眺めながら、頭の中はお昼からの告白でいっぱいで。
軽音部の人たちにも申し訳ない聞き方をしていると思う。
ぽんぽん、と美優が背中をなでてくれる。
小さな手だけど、そこから受け取るものは大きくて、ありがとう、と何度も思ってることを美優に言う。
そうしたら、「今日の虹は、いつもより何倍も可愛いから大丈夫だよ、」と笑ってくれた。
だけど、心臓はずっと不安定に浮いていて、そわそわ落ち着かない。
髪はゆるく巻いておろしてきた。
リップもお気に入りのものをもってきたし、いつもはしないけれどこっそり睫毛もビューラーであげてきた。
でも、そうやって少しでも可愛くしようと頑張っている間も、こんなことに意味なんてあるのかな、なんてネガティブな私が顔を出して。
そのたびに、胸ポケットの上に手を置いて、どうにか勇気を失わないようにこらえて学校まできたんだ。
「……虹、見守ってるからね」
「うん、ありがとう美優」
「朝比奈君がなんて答えようが、学祭終わったら一回あのイケメンのほっぺた叩かせてね」
「はは、それはだめ」
「じゃあ、くそやろう、って跳び蹴りしてもいい?」
「ふ、それはもっとだめだよ」
「なんでよー」
美優が私にからだをくっつけて、からかうみたいにこしょこしょってくすぐられる。
それで、ちょっとだけ緊張がほぐれた。
本当に、私はいい友達をもったと思う。
美優にも、本当は水嶋くんにも、ありがとうって何度言ってもいい足りない。