大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「―――ごめん、やっぱ無理だ」
体育館のどこでかは分からない。
だけど、聞き慣れた低音が、静かな空間にぽつん、と響いたんだ。
あ、の形で口を開いたまま、私はステージの下を見渡す。
私にマイクを向けていた生徒会長も、私に視線を注いでいたひとたちもみんな、ある方向に顔をむけている。
それで、その視線をたどったとき、そこにいたのは、
今、まさに私が名前を呼ぼうとした、その人だった。
目が合っている。
遠くなのに、それがわかる。
しん、としたままの体育館。
そんな中で、静かにステージに歩いてくる。
刺さるような視線なんて一つも気にしていないように。
目立つのが大嫌いなくせに、私だけをじっと見ながら、ステージにのぼってきた。
それから、生徒会長のマイクをとりあげて、ステージを見下ろして口を開いた。
「悪いけど、枢木虹は辞退するから」
それから、ぽかんと口をあけている生徒会長にマイクを返して、私の手首をつかんだ。
怒っているような、悲しんでいるような、諦めているような、たくさんの感情が交じり合った顔をされて、私は状況がつかめないまま、目を合わせる。
足は未だに震えているし、心臓だってうるさいままだ。