大好きなキミのこと、ぜんぶ知りたい【完】
「俺が、なんであの日、あのタイミングで、別れよう、って言ったと思う?」
「…わかんない」
「虹ね、疲れて眠っていて、それを俺は眺めてたんだけど、急に寝たまま、すり寄ってきて、名前呼んだんだよ。千歳くん、じゃなくて、『千尋、』って、すごい幸せそうに呼んだんだ。で、気づいた。ていうか、もう見ないふりができなくなった」
「…っ、」
「俺と付き合うことになって、千尋がそっけない、とか、あんまり話してくれない、とか、本当に落ち込んだ顔で相談してきたのも、俺とセックスするときに、千尋の存在をすごく気にしていたのも、俺の部活がないときに放課後遊びに行こうって誘っても、千尋と一緒に帰ることだけはかたくなに譲らなかったのも、」
「………うん、」
「虹は、千尋のことが好きだからだったんだって、一気にぜんぶ納得できた。それで、虹は自分の気持ちに気づかずに俺を好きだって信じてるんだ、って。解放してあげないと、って」
千歳くんは、まだ、穏やかな微笑みをうかべたままでいる。
私は、笑うことはできなかった。
かといって、もう罪悪感に苦しくなることもなく、薄暗い夜のなか、千歳くんに瞳をあわせて、本当はずっと伝えたくて、だけど一生伝えることはないと思っていたことを言うために、口を開く。