社長はシングルファーザー
みんなは定時で帰宅して行った。

数名を残しては。

「まだお帰りになれそうにないんですか。私、後やっときますので、帰ってください。夏休み楽しんでくださいね」と私は言ってみんなを帰した。

川合さんが私のところに来た。

「どうなりましたか?」って。どうやら気になっていたようだ。

「大丈夫よ。あなたとの契約は白紙にしたわ。代わりに私の資料と契約書を。あ、後ね、弁護士と相談したから。かなりの損害賠償金とれるはずなんだけど。明日は返上で片つけるわ。だから心配せずに夏休み楽しんでくださいね」と私が言うと、

「ありがとうございます」と川合さんは笑ってくれた。

そして、川合さんを見送った。

私は改めて作業を再開した。

そこに現れたのは、社長と要君。

私の横の席に座ると、どうだったかと聞いてきたので、内容は報告しておいた。

「良かった!とりあえずまあ、無理すんなよ。もう少し残るのか?」と言ってくれた。

「はい。大丈夫ですよ!明日も少しやります。私たちの勝ちですよ!がっぽり取ってやりましょ!」と私は笑った。

要君と社長は笑う。戸締まりとかは要君がキッチリしてくれた。

会社を片付けて、私たちは会社を後にした。

社長は家で息子が待ってるから先帰るね~と言い残して帰っていった。

残された私と要君はどーしようかと話してると、カズトが現れて、

3人で飲むことにした。

要君行きつけの例のバーに連れてきてもらった。

適当に注文して乾杯した。

完全なるプライベートな感じで要君も力を抜いていた。

ほとんどキャラは変わらないけど、酔いが回り始めると、饒舌になり、ボディータッチが激しくなる。少し飲んだだけでもすぐに酔いが回るらしい。

そして要君は、カズトにベタベタする。

カズトは平気な顔して、それに対応していた。

「飲むとけっこう積極的だねぇ。俺は嬉しいけど」とカズトは言っていた。

なんか少しほのぼのした。さっきまでの私は半分殺気だっていたのに。

普段は仕事スイッチが入ってるので、かなり出来る男なんだけど。

甘えんぼうになってるギャップが可愛すぎる!

私とカズトはかなり酒が強いらしく、二人でかなりの量をあけていた。

「アイツ、ほんとに家族のように社員を大切にしてるんだな。今日ランチして改めて感じたよ。特に飛鳥のことは気にかけてた。あれは多分…お前に気がある!そう言えば、お前はぐらかしたらしいな?俺との関係…まあ、お前が言いたくないなら、言える日まで俺は黙っとくけど。気をつけろよ?あんまり心配させてやるな。俺もいるし、いつでも頼ってきていいから」とカズトは言ってくれた。

私はありがとうと頷いた。

「で、ヤバイとこと問題起こしたんだって?」とカズト。

「違いますよぉ。巻き込まれたんですぅ」と要君は言った。

酔ってはいるのにちゃんと会話は成立しているところを見ると、さすがだなと感じた。

しばらく私とカズト他愛なく会話を楽しんだが、酔いつぶれた要君は寝てしまったのでタクシーでとりあえず、私の家まで連れて帰った。

カズトは私の家の中まで運んでくれて、ソファーにとりあえずおろしてくれた。

私は水を渡し、二人で水をイッキ飲みした。

「ありがとね。こんな要君初めて見たわ」と私が言うと、

「俺もだ。アイツが惚れるのなんかわかるな」とカズトは言っていた。

私たちは、ソファーで眠る要君を見ながら、ダイニングチェアに座った。

「可愛いな。ほんとに、要君」とカズトは言う。

「そうですね。気がかりで、気張りすぎてたのかもしれませんね。こんなに飲むなんて。飲ませたつもりも無いのに…」と私は笑った。

「一人で大丈夫か?俺そろそろ帰るけど。なんかあったら遠慮すんなよ?」そういうと、カズトは立ちあがる。

「もう少しいてくれない?」と私が言うと、

「まあ、お前の頼みなら」と座り直してくれた。

「怖いのか?大丈夫だよ!お前なら」いつもの優しい笑顔でカズトは励ましてくれた。

この笑顔で大丈夫!と言われるとほんとに大丈夫な気がするから不思議でならないが。

帰り際、カズトは要君をベッドまで運んでくれた。

それを見送り、改めて、私は要君を見た。

純白な寝顔はどこかあどけなかった。

私はしばらく眺めてから、私の部屋着に着替えさせ、要君の服を洗濯機に入れた。

あ!下着はどうしよう??

と思い、カズトに連絡した。

カズトは下着を準備して届けてくれた。

洗濯が終わると、私は乾燥にかけた。

そのあと、私は朝食の準備を始めた。

全て仕上げて寝れたのは、深夜をかなり過ぎた頃だった。

朝は少し遅めに起きた。

そして、準備を整えた私は要君に

『おはよう要君。ぐっすり眠れたかしら?二日酔いはしてない?朝食用意したから食べてね。シャワー入って、お洋服は洗濯して乾燥しといたから。脱衣場に置いとく!部屋はオートロックだから忘れ物なく出てね!素敵な夏休みを。仕事行ってきます。
またランチでも行こうね!』という内容の置き手紙を残し、会社に向かった。

私は会社に着き、仕事を始めた。

会社のパソコンでメールを確認したら、プレイジから返事があって、よろしくお願いしますとのこと。

とりあえずほっとした。

少し残っていた仕事を一気に片付けた。

チラッと私は時計を確認した。お昼前には終わりそうだ。

スマホが鳴った。

「夏休みなのに悪いな。今から行く」社長からだった。

数分後、ほんとに社長は現れた。

私はペースを上げて仕上げた。

社長と話そうとしたとき、スマホは鳴った。

今度は、要君からだった。

私は電話にでた。

「もしもし?おはよう」と私が言うと、

「部屋着に下着、朝食、シャワーありがとうございました」と丁寧に要君は言う。

「いいのよ。あっ、もう酔ってない?服、勝手に脱がせてごめんね?下着も…サイズ大丈夫だったかな?それ心配で…朝食も問題なく?」と私が言うと、

「何から何まですいません。ほんとに…」と要君。

「いいのよ。お礼なら、カズ…や、篠井さんに言ってね?あ、荷物置きに帰ったら来る?ランチでもどう?」と私が言うと、

「行きます!」と元気な返事が帰ってきて、私は嬉しくて微笑んだ。

「じゃあ、待ってるわね!」と私は電話を切ったんだけど…

社長がかなり不機嫌だった。

理由はわからないけど。

「…要、泊めたのか?」とドスの聞いた低い声で聞かれた。

「はい。酔い潰れてて、家帰れそうに無かったので」と私が言うと

「潰れるまで飲ましたのか?」と言われてしまう。

「違いますよ!自分の意志で飲んでましたよ。まあ、私たちの飲む量が少し多くて、便乗させたのかもしれませんが」と私が言うと、

「私たち?誰と飲んだんだ?あ、篠井って言ったよな?カズトとか?」と社長。

どうしたんだろう?急に…随分焦ってるようなものの言い方。

「はい。帰り際、たまたま会ったので3人で飲みました」と私が言うと、

「そんなに仲いいのか?さっき、名前で呼ぼうとしてたよな?」と社長に言われてしまう。

私は何も言えなくなってしまった。

そこにナイスなタイミングで現れた、要君。

「あー社長も来てたんですかぁ?」とケロッとしたいつも通りの笑顔で要君は言う。

「お前なぁ…何で勝手に獅童さんの家泊まってるの?」と社長は要君に矛先を変えた。

「だってぇ。飲みすぎてそのまま潰れたんで記憶無いんだもーん」って普通に‼

いやいや、社長けっこう怒ってますけど?

「あ?もしかして拗ねてます?篠井さんに後でお礼言わなきゃな~。飛鳥さん!ほんとにご無礼、ごめんなさい!今日は昨日のお礼ってことでランチ奢るつもりで来たんです!」と要君は言う。

「ついでだ。俺が出すから3人で飯行こう!」と社長は言い出した。

なので、私たちは3人でランチすることになり、会社を出た。

社長はかなり機嫌が悪いままだったけど。

社長に連れられて来たのはオシャレなフレンチのお店。

凄く人気のランチプレートがある。

私はそれを注文した。

社長と要君は見事にかぶり、同じものを注文していた。

それには思わず笑ってしまった。







< 18 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop