社長はシングルファーザー
しばらく車は走り、ACEについた。
受付に繋いで貰い、中に入った私たち。
「よく来たねーいらっしゃい」と笑顔で迎えてくれた。もちろんビジネススマイルだ。
元々顔の造りがいいカズトは笑顔なだけで充分絵になるが、やり手の社長と言うこともあり、かなりモテるらしい。
確かに、この笑顔には何度も守られ、救われてきた。私もこの笑顔は大好きだ。
男気もあって格好いい…私はついつい見惚れてしまう。
「そんなに見られたら照れますねー獅童さん?」とカズトに言われて、慌てて
目をそらした。
「ワザワザありがとうございます!こちらへどうぞ」とカズトに案内され、社長室に入ることになってしまった。
どっ…ど緊張…
「まあまあ、そんなに緊張しないでください」と柔らかく言うカズトだがどこか楽しそうなのが妙に苛立つ。
「先日はすいませんでした‼」と勢いよく頭を下げた要君。
さすがな対応だわ。それに比べて私は何をうろたえてるのかしら…。
情けないわね。
私はとりあえず、要君に習い、頭を下げた。
「ん?あー大丈夫。アイツとこの社員は随分頭の硬い人が多いんだねー」そう言いながら、ソファーに座るように促されて、私たちはソファーに座った。
「お茶とコーヒーどちらがいいですか?」
「コーヒーで!」ときれいに重なる私と要君。
顔を見合わせて笑ってしまう。
「あ、これ、つまらないものですが…」と要君は手土産を渡した。
私はそんな光景になれずにソワソワしてしまうが、慣れた対応で堂々としている要君を格好いいと思った。
コーヒーが目の前に置かれて、私は鞄から資料を出して、「再資料です。ヨロシクお願いします」と頭を下げた。
パラパラと中を確認したカズトは
「詳しいことは、また連絡する。あ、担当はもちろん、獅童さんにお願い出来るんですよね?」と言ってきた。
え??どーゆうこと!?そんなのキイテナイ
私の心の声なんて無視するように。
「もちろんですよ。希望でしたら何でもおっしゃっていただいて構いません」と要君は言った。
って!!だから何で勝手に?!
てか、最初からそのつもりで私一緒にこさされたの?
はめられたわけ?
私は思わず、要君を睨み付けた。
けど、要君は何事もないように平然とけろっとしていた。
何この敗北感…そして、二人がグルな感じ。
まあ仕事だから仕方ないけどね。
「さてと、堅苦しい仕事のはなしはここまでにしようか、東条くん?」とカズトは言って、はいと頷く要君。
「最近どうなのよ?アイツは…」とカズトは言い出した。
「変わらず忙しくされています。特に夏休み前と言うこともありほとんど休息も取られず頑張ってるみたいで…」と要君が言う。
「そうか、アイツらしいな。あ、けど、くれぐれも無理はさせんなよ?アイツを止められるのお気に入りの東条くんぐらいなんだから」とカズト。
どうやら心配してくれてるらしい。
「はい。気をつけます」と要君は笑う。
「で、そろそろ俺の相手する気にはなったか?」とカズト。
「いえ、俺には社長だけですから」と要君。
「そうか、一途でいいなぁ。アイツのオトコだから相性はいいと思ったんだが…」とカズト
「そうですね。1度くらいは構いませんけど?仕事に差し支えたら困りますので、お断りしときます」と要君が笑顔で言うと、
「チッ、また断られたかぁ。そんなこと言われると、マジで欲しくなる。めっちゃタイプやのに、要君」とカズトは言った。
二人のそんな会話を私は何も言えず、ただ見守るしか出来なかった。
「で、飛鳥は俺に言いたいことは無いわけ?」といきなり話をふってきた。
しかも!!獅童さんからいきなり呼び捨てに変わったし!!
一気に仕事感は抜けた。
「言いたいこと?特にありません」と私はビジネススマイルを張り付けて言う。
けど、そんなの、カズトに通用するわけなどない。
カズトは昔からすぐにどんな小さなことにでも気づいてくれた。
苦しんだとき、悩んだときはずっと側で話を聞いてくれたのだ。
私のビジネススマイルなんてお見通しなんだろう。
「そうか?今言いたくないなら、後日でもいいよ?アドも番号も変えてないからいつでも連絡してこいよ?あ、LINEのIDくらいは教えとくからさ」とカズトは言って、自分の名刺の後ろに、IDを書いて渡してくれた。
保存用にともう一枚名刺をくれた。
「お知り合いですか?」と要君はカズトに向かって言う。
知ってるくせに!けど、白々しくなく自然体だった。
酔った勢いのことなんて思ってないよね?
あんまり飲んでないし!
わざと言ってるのよね?中々面白い子ね。ほんとに。
「…元カノ…」はっきりカズトはそう言った。
「そうでしたか。飛鳥さんの様子が少し気になったものでもしかしてと思ったんですが…」と要君が言う。
「そっか。まあいつかバレるだろうけど、アイツには黙っててね?俺の愛したオンナだから、これからも大事にしたいけどアイツが惚れる可能性も0じゃないから」とカズトは言った。
私は何も言えなかった。
「圭斗も元気してるか?」とカズト。
「はい。よく社長が話してくれますので。けど、忙しくて寂しい想いをさせてるって感じてるみたいです」と要君。
「そうか、適度に休ませて、時間作るように調整してやってくれよ。アイツのことは心配してるんだ。もちろん、圭斗のことも。夏休みでも仕事したりするのが悪い癖だからな」とカズトは言った。
優しすぎるわ。ほんとに大切にしてるのがよくわかる。
私も何でこんな人と別れたんだろうって少し今更ながらに後悔はしたが、やり直そうなんて気は更々ない。
だって、カズトに恋愛感情はもう微塵も無いもの。けど、ほんとにいい男。
女がいないのが不思議。男に走ったから?
いや、それは違うな。私はフッと笑ってしまった。
「ん?飛鳥どーした?何笑ってる?」とカズトは聞いてくる。
「いえ、やっぱり篠井さんはいつみても格好いいままだなぁと…」と私が言うと、
「嬉しいこと言ってくれるねぇ。ありがとう。これからもよろしくね」とカズトは握手を求めてきたので、握手を返した。
そしたらカズトは耳元にいきなり顔を近づけて、『昔のように、またカズトって呼んでくれ』と低くてセクシーなあの時と変わらない声で囁いた。
私は思わず、顔を真っ赤にして頷いた。
「お忙しいところ、長居してしまいスイマセン。そろそろ帰りますね」と要君は立ち上がった。
私は熱の覚めない顔のまま、カズトの手を離し、慌てて頭を下げた。
そして、ロビーまで見送って貰い、ACEを後に、会社に戻った。
「どうでしたか?元コイビトとの再会は?」と要君は聞いてきた。
「…何であそこまで冷静に対処出来るのかと驚いたわ。けっこう凄いこと言われてたのに…」と私が言うと、
「そうですねぇ。肝が座ってるんでしょうね。じゃなきゃ、社長と寝て認めてもらおうとしませんよ。多分!あ、この事は二人の内緒ということでお願いしますね?」なんて要君に言われて、頷いた。
そして私は自分のデスクへと戻ったのだった。
仕事を再開した。
定時にはやっぱり終わりそうになく、少し残業することになった。
仕事を終えて、会社を出ると、ナゼかカズトがいて、
「お疲れ様、久しぶりの再会に乾杯しないか?」とカズトらしい誘い方で私を誘ってきた。
私はそんなカズトに笑いかけて「いいよ」と言った。
受付に繋いで貰い、中に入った私たち。
「よく来たねーいらっしゃい」と笑顔で迎えてくれた。もちろんビジネススマイルだ。
元々顔の造りがいいカズトは笑顔なだけで充分絵になるが、やり手の社長と言うこともあり、かなりモテるらしい。
確かに、この笑顔には何度も守られ、救われてきた。私もこの笑顔は大好きだ。
男気もあって格好いい…私はついつい見惚れてしまう。
「そんなに見られたら照れますねー獅童さん?」とカズトに言われて、慌てて
目をそらした。
「ワザワザありがとうございます!こちらへどうぞ」とカズトに案内され、社長室に入ることになってしまった。
どっ…ど緊張…
「まあまあ、そんなに緊張しないでください」と柔らかく言うカズトだがどこか楽しそうなのが妙に苛立つ。
「先日はすいませんでした‼」と勢いよく頭を下げた要君。
さすがな対応だわ。それに比べて私は何をうろたえてるのかしら…。
情けないわね。
私はとりあえず、要君に習い、頭を下げた。
「ん?あー大丈夫。アイツとこの社員は随分頭の硬い人が多いんだねー」そう言いながら、ソファーに座るように促されて、私たちはソファーに座った。
「お茶とコーヒーどちらがいいですか?」
「コーヒーで!」ときれいに重なる私と要君。
顔を見合わせて笑ってしまう。
「あ、これ、つまらないものですが…」と要君は手土産を渡した。
私はそんな光景になれずにソワソワしてしまうが、慣れた対応で堂々としている要君を格好いいと思った。
コーヒーが目の前に置かれて、私は鞄から資料を出して、「再資料です。ヨロシクお願いします」と頭を下げた。
パラパラと中を確認したカズトは
「詳しいことは、また連絡する。あ、担当はもちろん、獅童さんにお願い出来るんですよね?」と言ってきた。
え??どーゆうこと!?そんなのキイテナイ
私の心の声なんて無視するように。
「もちろんですよ。希望でしたら何でもおっしゃっていただいて構いません」と要君は言った。
って!!だから何で勝手に?!
てか、最初からそのつもりで私一緒にこさされたの?
はめられたわけ?
私は思わず、要君を睨み付けた。
けど、要君は何事もないように平然とけろっとしていた。
何この敗北感…そして、二人がグルな感じ。
まあ仕事だから仕方ないけどね。
「さてと、堅苦しい仕事のはなしはここまでにしようか、東条くん?」とカズトは言って、はいと頷く要君。
「最近どうなのよ?アイツは…」とカズトは言い出した。
「変わらず忙しくされています。特に夏休み前と言うこともありほとんど休息も取られず頑張ってるみたいで…」と要君が言う。
「そうか、アイツらしいな。あ、けど、くれぐれも無理はさせんなよ?アイツを止められるのお気に入りの東条くんぐらいなんだから」とカズト。
どうやら心配してくれてるらしい。
「はい。気をつけます」と要君は笑う。
「で、そろそろ俺の相手する気にはなったか?」とカズト。
「いえ、俺には社長だけですから」と要君。
「そうか、一途でいいなぁ。アイツのオトコだから相性はいいと思ったんだが…」とカズト
「そうですね。1度くらいは構いませんけど?仕事に差し支えたら困りますので、お断りしときます」と要君が笑顔で言うと、
「チッ、また断られたかぁ。そんなこと言われると、マジで欲しくなる。めっちゃタイプやのに、要君」とカズトは言った。
二人のそんな会話を私は何も言えず、ただ見守るしか出来なかった。
「で、飛鳥は俺に言いたいことは無いわけ?」といきなり話をふってきた。
しかも!!獅童さんからいきなり呼び捨てに変わったし!!
一気に仕事感は抜けた。
「言いたいこと?特にありません」と私はビジネススマイルを張り付けて言う。
けど、そんなの、カズトに通用するわけなどない。
カズトは昔からすぐにどんな小さなことにでも気づいてくれた。
苦しんだとき、悩んだときはずっと側で話を聞いてくれたのだ。
私のビジネススマイルなんてお見通しなんだろう。
「そうか?今言いたくないなら、後日でもいいよ?アドも番号も変えてないからいつでも連絡してこいよ?あ、LINEのIDくらいは教えとくからさ」とカズトは言って、自分の名刺の後ろに、IDを書いて渡してくれた。
保存用にともう一枚名刺をくれた。
「お知り合いですか?」と要君はカズトに向かって言う。
知ってるくせに!けど、白々しくなく自然体だった。
酔った勢いのことなんて思ってないよね?
あんまり飲んでないし!
わざと言ってるのよね?中々面白い子ね。ほんとに。
「…元カノ…」はっきりカズトはそう言った。
「そうでしたか。飛鳥さんの様子が少し気になったものでもしかしてと思ったんですが…」と要君が言う。
「そっか。まあいつかバレるだろうけど、アイツには黙っててね?俺の愛したオンナだから、これからも大事にしたいけどアイツが惚れる可能性も0じゃないから」とカズトは言った。
私は何も言えなかった。
「圭斗も元気してるか?」とカズト。
「はい。よく社長が話してくれますので。けど、忙しくて寂しい想いをさせてるって感じてるみたいです」と要君。
「そうか、適度に休ませて、時間作るように調整してやってくれよ。アイツのことは心配してるんだ。もちろん、圭斗のことも。夏休みでも仕事したりするのが悪い癖だからな」とカズトは言った。
優しすぎるわ。ほんとに大切にしてるのがよくわかる。
私も何でこんな人と別れたんだろうって少し今更ながらに後悔はしたが、やり直そうなんて気は更々ない。
だって、カズトに恋愛感情はもう微塵も無いもの。けど、ほんとにいい男。
女がいないのが不思議。男に走ったから?
いや、それは違うな。私はフッと笑ってしまった。
「ん?飛鳥どーした?何笑ってる?」とカズトは聞いてくる。
「いえ、やっぱり篠井さんはいつみても格好いいままだなぁと…」と私が言うと、
「嬉しいこと言ってくれるねぇ。ありがとう。これからもよろしくね」とカズトは握手を求めてきたので、握手を返した。
そしたらカズトは耳元にいきなり顔を近づけて、『昔のように、またカズトって呼んでくれ』と低くてセクシーなあの時と変わらない声で囁いた。
私は思わず、顔を真っ赤にして頷いた。
「お忙しいところ、長居してしまいスイマセン。そろそろ帰りますね」と要君は立ち上がった。
私は熱の覚めない顔のまま、カズトの手を離し、慌てて頭を下げた。
そして、ロビーまで見送って貰い、ACEを後に、会社に戻った。
「どうでしたか?元コイビトとの再会は?」と要君は聞いてきた。
「…何であそこまで冷静に対処出来るのかと驚いたわ。けっこう凄いこと言われてたのに…」と私が言うと、
「そうですねぇ。肝が座ってるんでしょうね。じゃなきゃ、社長と寝て認めてもらおうとしませんよ。多分!あ、この事は二人の内緒ということでお願いしますね?」なんて要君に言われて、頷いた。
そして私は自分のデスクへと戻ったのだった。
仕事を再開した。
定時にはやっぱり終わりそうになく、少し残業することになった。
仕事を終えて、会社を出ると、ナゼかカズトがいて、
「お疲れ様、久しぶりの再会に乾杯しないか?」とカズトらしい誘い方で私を誘ってきた。
私はそんなカズトに笑いかけて「いいよ」と言った。