冷たい指切り  ~窓越しの思い~
「………………それで、伊藤さんと目が合うことが不思議だと。
和君…………よくそれで女子校の教師になったよね??
………………伊藤さんも……………可哀想に…………。」

伊藤さんが可哀想??

もしかして、原因は俺か??

樹のあいまいな返事に苛つくも………

「伊藤さんのプライバシーだから、勝手に答えを言えない。」と言う。

………………プライバシーと言われては…………何も言えない。

だけど…………樹に分かって、俺に分からないと言うのは………釈然としない。

結局………

答えを聞きたいのなら、直接伊藤さんに聞くしかないと言われた。

しかし………ただの担任が、恋愛に悩んでいるのかと聞くのもなぁ~

…………………………。

でも、あれ程目線が合うと言うことは……………

教師としてではなく……お兄ちゃんとして聞いて欲しいのかもしれない。

樹に答えをもらった訳ではないが………

やることが見つかって機嫌が良くなった俺に

「ちぃちゃんに『視線を感じる』とか『誰か好きな人がいるのか?』って
直球で聞いたらダメだよ。」と注意してきた。

色々うるさい奴と思いながら「了解」と応えて帰る。

ドアを閉める時微かに届いたのは……

「ちぃちゃんも……あんな奴好きになって………大変だぁ~」と言う樹のつぶやきだった。
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