冷たい指切り  ~窓越しの思い~
『こんばんは。今、大丈夫?』

あれから俺は、伊藤さんに電話をかけた。

樹のマンションにいた頃は、毎日当たり前のようにかけ

様子を確認していたが………

自宅に帰ってからは、かける必要もなくずいぶん久しぶりだ。

学校では、毎朝出欠をとったり授業であてたりと声を聞くし

準備室で話したりもしているのに

電話をかけるというのは…………緊張する。

相手を確認しないでとったらしい彼女は……

「ハイハイ。」と気の抜ける声で出た。

クスリと笑って

『和君です。』とからかうと

「えっ!あっえっ!!先生っ!!!!」と大声を出して

ベットから飛び起きる音が聞こえた。

『もしかして、もう寝てた?
…………って言っても……まだ8時だけど。』

「いえ!寝てません。ゴロゴロして英単語は覚えてましたけど……」

『あっ、ごめん。勉強の邪魔した?』

「いえっ!邪魔なんて!!
今日は、お姉ちゃんが遅くなるらしくて一人だから退屈で……
ゴロゴロしてただけで……。」

ゴロゴロのんびりするのに、英単語を覚えるって……

らしいけど……笑える。

「だったら……時間大丈夫だよね。このまま電話して良い?」

「はい!」

彼女の緊張に、ちょっとリラックスする。

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