冷たい指切り  ~窓越しの思い~
「「あの!!」」

俺の言葉に被って、彼女の声がした。

「何??」

「いえ、先生がお先に。」

「いや、先に言って。」

聞こう!とは思っているけど……彼女の言葉が気になる。

「私。…………先生に食べて欲しくて……練習してるんです。
他の人なんて…………。」

えっ!あれっ??

ホントに俺のため??

……………………………………………………何故だ??

「………………先生。…………もしもし、先生。
まさか…………切ってませんよね??」

長い沈黙が続いてしまった。

「あぁ~ごめんごめん。
…………えっと………俺のため??」

「…………はい。」

…………………………………。

鈍い俺でも、気づいてしまう…………俺のためって……そういうことだよね?

「そっかぁ…………………うん…………。」

相談にのろうとか、聞き出そうなんて言ってたけど…………

俺のことか。

「先生??」

「あぁ、聞いてる。
ところで、文化祭のことだけど………」

強引過ぎる、話題変更だけど……それしか思い浮かばなかった。

電話は、着物の手配やお茶菓子、喫茶のメニューなどを話して30分程で切った。

頭が真っ白になるという表現を、よく聞くが………本当になったのは初めてだ。
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