冷たい指切り  ~窓越しの思い~
夜になるとかなり冷えるベランダに出て………

4年ぶりになる煙草を吸ってみた。

今日………樹に言われたことは………衝撃的だった。

俺は…………………

彼女を守りたいと言いながら、自分を守ることばかりを考えていたのだ。

確かに

樹のやっていることは………ムチャクチャで………

教師としても、大人としても…………褒められたものではない。

だけど、恋をした一人の男としては………

俺より潔く…………

本人には………決して言わないが……

格好いいとさえ思ってしまった。



昇っていく煙を眺めながら…………

春に出逢ってから今日までの時間を………思い浮かべた。

カルピスに喜ぶ姿、父親の浮気に苦しむ姿……

クラス委員として信頼のあつい姿、頑張る姿に涙する姿。

うさぎのぬいぐるみを大切そうに抱える姿は……可愛いかった。

………………………本当は………俺だって気づいてる。

クラスの子、全員………こんなに……浮かび上がらない。

彼女だからだ。

……………ただ、

樹のように、受けれる勇気も覚悟も持てない。

それで……大切な彼女を傷つけているとしても…………。

…………………………………………………。

冷たい風に当たるのは…………かなりの決心がいる。

昔は………

何も考えないで、突っ走れたのになぁ。

大人になると………不自由が増えていくことを……実感した。
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