冷たい指切り  ~窓越しの思い~
迎えた後夜祭。

発案から準備………当日まで頑張った生徒達が、楽しみにしている時間だ。

部によっては………

ここで3年生が引退となり、新部長を任命する時間でもある。

別れや、新たな出発の時に……

涙する姿も、あちらこちらで見られる。

後夜祭に先駆けて………クラスのミーティングを済ませたから

クラブの顧問をしてない俺は、のんびり準備室で過ごす。

クラス全員が、彼女の頑張りを称えていた。

これからの時間は、放送部で頑張りを認められ……

部長に抜擢されるだろう。

それほど、端から見ていても………クラブもしっかり頑張っていた。

窓の外はすっかり暗くなり、人の顔も……少し離れると判別出来ない。

遠くに見える校庭には、沢山の生徒と教師が参加しているようだ。

………………あぁ、暇だぁ。

ソファーに座り、いつもとは違う銘柄のブラックを飲んでいたら………

コンコン

「失礼します。」と……………。

入って来たのは………今、いるはずのない…………伊藤さん。

………………………………………………。

「えっ!!あぁ??えっ!」

『言葉にならない。』とは…………まさに今の事だ。

やっと出た言葉は『何で??』だ。

「先生に、お話しがあって来ました。」

先日の、迷った表情は微塵もなく

清々しい程に、凛とした彼女は…………

俺の目を、しっかりと見つめていた。
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