愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
データを消すまでの行為に及んだ背景には、恨みをぶつけずにはいられなかったという思いと、あっという間に追い越されるのでは……という危機感があったのだと言う。

私に失敗させることで、この人に重要な仕事は任せられないと、周囲に思わせたかったという話であった。


それを聞いた時には『ひどい!』と怒りたくなったけれど、なにもわからなかった私を丁寧に指導してくれたことについては心から感謝しているし、そこまでさせるほどに焦らせてしまったのだから、私にも落ち度はあると反省した。

私の加入で、忙しい本橋さんの仕事量を減らせると喜んでいたなんて、愚かだった。

本橋さんは、そんなこと、少しも望んでいなかったのに……。


小さなため息をついてから、視線をパソコン画面に戻して、仕事に集中しようとする。

けれども本橋さんは今頃どんな気持ちで働いているのかと気になり、すぐに手を止めてしまった。


彼女は今、東北にあるモルディの製菓工場で製品管理の業務に就いている。

本橋さんを異動させないでほしいと、桐島さんに必死にお願いしたのだけれど、『加害した方を別の勤務地へというのが社内規則です。社長としてそこは曲げられない』と言われてしまったのだ。

< 101 / 258 >

この作品をシェア

pagetop