愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
「どうしたの?」

「あ、あの……」


説明できずに困った私は、「そうだ、ぬか漬けをお出しするのを忘れていました」と話を逸らすことにする。

「エマさん、うちのぬか漬けを食べてみませんか?」と問いかければ、『ぜひ食べてみたい』という返事が桐島さんの通訳を介して戻ってきた。

これ幸いとばかりに私は急いで立ち上がり、隙間風の吹き込むひんやりとした台所へ。

ひとりの空間に足を踏み入れると、作り笑顔を消して、大きなため息をついた。


どうしよう。やっぱりエマさんを、心から歓迎できない……。

それは私の心の問題であり、彼女には少しの落ち度もない。


この嫉妬のような気持ちはどこから湧いてくるのだろう?

桐島さんは兄で、私は妹。

そんな関係が心地よかったはずなのに、兄に恋人がいるくらいでこんなにも心が乱されるなんておかしなことだ。

汚れたボロ雑巾のような醜い心を桐島さんに見られたくないから、様子がおかしいと気づかれたくない……。


今日はすっかり避難場所になってしまった台所で、私は深呼吸する。

それから『しっかりしなさい』と自分を叱咤して、床に膝をつけて漬物樽の蓋を開け、キュウリやナス、大根を取り出した。


漬けたのはキュウリが今朝で、大根は二日前だ。

野菜の種類や季節によって、ぬか床に漬ける時間は異なる。

祖母から受け継いだぬか床と、教わった料理の知識は私の宝物。

祖母がいた頃と変わらぬ、美味しいぬか漬けを食べられることに感謝していた。

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