愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
「はい。いってらっしゃい……」


『エマを頼みます』という言葉が、この胸に新たな傷を作る。

彼女を特別大切に思っているのだと、告げられた気がして……。


桐島さんが出かけていき、音に出さないため息をついた私は、樽から出したぬか漬けの野菜を軽く水洗いする。

それを年季の入った青森ヒバのまな板にのせ、包丁で切っていると、今度はエマさんが「オジャマシマス」と台所に入ってきた。


待ちきれなくて、ぬか漬けを取りに来たのかと思ったが、そうではない様子。

楽しそうな顔で、棚に並んでいる物や壁にかけてある調理器具を眺めているので、どうやら古い日本の台所に興味があるようだ。

さっきまで私が蓋を開けていた漬物樽を指差して、身振り手振りを交えて、これはなにかと尋ねてくるエマさんに私は困る。


どうやって答えればいいのだろう……。


私には彼女のように、表情豊かにジェスチャーで相手に気持ちを伝えることはできそうにない。

照れのような恥ずかしさを感じてしまうからである。
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