愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
店員の彼は、嫌そうな目で私たちを見るだけで、なにも言わないでいてくれる。

桐島さんはズボンのポケットから財布を出し、一万円札をテーブルに置くと、左手で私のショルダーバッグ、右手で私の手首を掴んでドアへと歩きだした。


私は五百円しか使っていない……と言える雰囲気ではなかった。

桐島さんが足早に進めば、私は小走りになる。

店を出て通路を通り、ビルの外へと足を踏み出したら、ひんやりとした夜風が私の頬を撫でた。

桐島さんは紫陽花荘に向け、無言で私を引っ張るようにして歩いている。


「桐島さん、あの……」


恐る恐る大きな背に問いかければ、少し歩調を緩めてくれて、彼が隣に並んだ。

私が逃げるとでも思っているのか、掴んでいる手首は放してくれない。

いつもの笑顔はなく、不機嫌そうな真顔に気圧されつつも、まずは友達とお泊まり会だと嘘をついたことを謝った。


よく考えてみれば、こんな夜になって急に懐かしい級友五人で集まることになるのは不自然だ。

私は嘘をつくのが下手なのだと自己分析しつつ、「どうして私の居場所がわかったんですか?」と不思議に思っていたことを問いかけた。

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