愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
「桐島さん……」と掠れた声でその人の名を呼んだ後は、驚きのあまりに言葉が出てこなかった。


桐島さんは肩で呼吸していた。

どうやらここまで全力で走ってきたらしい。

ネクタイを外したワイシャツ姿で、ジャケットもコートも羽織っていないのは、焦って紫陽花荘を飛び出したからだと思われた。


そうさせてしまったのは、私が電話を切り上げて、スマホの電源も落としたからに違いなく、申し訳なさが込み上げる。

それと同時に、なぜ私の居場所がわかったのかと不思議に思っていた。


桐島さんは呼吸を落ち着かせてから、私を背中に隠すように立ち、店員の彼と対峙して言う。


「彼女は連れて帰るから、君の世話にはならないよ」


その声は低く、怒っているような凄みがあり、私は慌てた。

店員の彼が私を誘ったことを察したようだけど、それは親切心からくるもので、下心があるわけではないのだ。

桐島さんの苛立ちは店員ではなく私に向けられるべきで、「ごめんなさい、私が悪いんです」と謝って「ここを出ましょう」と立ち上がった。

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