愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
「有紀子は友達に、恋人はいないと言ったの? それはなぜ?」

「あ、あの……」


桐島さんの笑顔が怖いと感じたのは初めてかもしれない。

すぐにでも誤解を解きたかったが、店員の女性が近づいてきて、「社長、なにかご注文なさいますか?」と問いかけるから、弁解できなくなる。

桐島さんはコーヒーを頼もうとしていて、慌てた私はその言葉を遮るようにして「もう出ます」と立ち上がった。

ここでコーヒーを飲みながら、ゆっくり問い詰められては困るからだ。


会計を済ませて店を出た私たちは、エレベーターホールへと繋がる別の入口からこのビル内に足を踏み入れた。

休日なので通路を行き交う人はなく、私は桐島さんを引っ張るようにして奥へ進むと、廊下のくぼみのような場所に入り込む。

そこは自動販売機が二台とベンチシートが置かれた、小さな休憩スペースである。

振り向いて彼と向かい合った私は、まずは「ごめんなさい!」と謝った。

それから、「社内では交際を秘密にしてもらえませんか?」とお願いする。

桐島さんは眉間に皺を寄せていて、頷いてはくれない。

彼の疑問は私の思惑とは別のところにあるらしく、「社内で気になる男ができた?」と不安げな目で問いかけられた。


「ええっ!? ち、違うんです。秘密にしたい理由は、そういうことではなくてーー」

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