愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
険しい桐島さんの横顔を見ながら、二股をかけていたと誤解されなかったことにホッと息をつく。

けれども、焦りはすぐに復活した。

私たちの交際を一本気さんに知られてしまったことは、私の望むところではない。

それに加えて、ふたりが口論になったらどうしようと恐れているのだ。


桐島さんに厳しいことを言われた一本気さんは、「交際相手がいるというのは本当だったんですね。それが、まさか社長とは……」と俯いて呟き、動揺した様子であった。

しかし、すぐに気持ちを立て直したようで、キッと顔を上げ、強気な視線を桐島さんに向けている。

相手が社長であっても、恋愛事においては関係ないと言いたげに、臆する事なく持論を展開する。


「小川さんはこの前、交際三カ月の恋人がいると言っていました。そんなに経っているのに肉体関係がないのはどういうことでしょう。もしかして社長は、彼女に拒まれているのではありませんか?」


私の肩を抱く桐島さんの右手に力が加わり、チラリと視線が私に流された。

そこまで話したのか?と問いたげな、非難めいた視線である。

私は焦って首を横に振り、「あの、経験のない女性は匂いでわかるんだそうです……」と恥ずかしく思いながらも小声で弁解した。


桐島さんは小さなため息をつく。

一本気さんに戻した視線には、怒りよりも呆れが滲んでいるようだ。
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