愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
あの後、一本気さんが先に小会議室から出ていって、私たちふたりが残された。

緊張が解けた私は、一本気さんに迫られていたところを助けてもらったことに、まずはお礼を言った。

そして、どうして私が会議室にいるとわかったのかと聞いてみた。


『有紀子の助けを呼ぶ声が聞こえてね』というのは冗談ではないらしい。

桐島さんは営業部に用があって尋ねた後、たまたま小会議室前を通ったら、私の悲鳴が微かに聞こえたそうだ。

その偶然に驚き感謝するとともに、肩を落として出ていった一本気さんを心配した。

怒りが収まれば、私のせいで彼が辞職する羽目になったらどうしようと、不安に思ったのだ。


『あの、一本気さんをクビにしたりしませんよね?』と桐島さんに問いかければ、優しい笑みを浮かべた彼が『処分する理由がない』と頷いてくれた。

一本気さんは真面目で仕事熱心な社員である。

『私的な感情で、彼への態度や待遇を変えることはない』と言ってくれて安堵したのだ。


私が社内の男性に交際を求められるという驚きの出来事は四日で解決し、桐島さんはお昼休みのあの一件がなかったかのように普通に西瓜を食べている。

私の場合は、解決しても、しばらくは心が落ち着かない気がして桐島さんを尊敬しつつ、風鈴の鳴る縁側に近づいた。
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