愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
私たちは、座卓に向かい合って座っている。

私は先に夕食を終えていて、麦茶を飲みならがら彼を心配した。


ワイシャツに緩めたネクタイ、スーツのズボン姿の彼は、十五分ほど前に帰宅してからずっと浮かない顔をしており、疲れているのだろうと察する。

夕方に帰国して、その後、二十時半頃まで仕事をしていたのだから、食欲がないのも頷けた。

「体調が悪いんですか?」とも心配したら、桐島さんは「大丈夫だよ」と微笑んでくれたが、すぐに表情を硬くして、「有紀子に話があるんだ」と低い声で言った。


なにか、よくない知らせだろうか……。


嫌な予感がして、私は崩していた足を直す。

背筋を伸ばして正座をし、着ているエプロンの裾を両手で握りしめて、聞く態勢をとった。

鼓動が嫌な音で鳴り立てている。


よほど言いにくい話なのか、彼は一度お茶を口に含み、ゆっくりと時間をかけて飲み込んでから話しだす。


「実は、ベルギー社でーー」


その話は、私にとって青天の霹靂であった。

来月、十月一日からベルギー社に戻ると言われたのだ。

ここ数年、向こうの業績が右肩下がりに悪化しているそうで、ベルギー社の社長であり、モルディグループの最高責任者である彼の叔父は、あの手この手と経営を立て直すべく奮闘していたらしい。
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