愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
忘れてしまった方が、振られた傷を早く癒すことができるのかもしれないけれど、どれだけ痛くても、思い出は捨てられない。

私はこの先もずっと、桐島さんを愛していたいから……。


人の賑わう繁華街を横道に折れて、車線のない細道を進む。

高層マンションに囲まれた中通りは、夕焼けの光が届きにくいので、駅前の通りよりもずっと薄暗かった。


紫陽花荘の前に着いた私は、玄関前で「あれ……?」と独り言を呟いた。

玄関の引き戸の曇りガラスが、ぼんやりと明るいのだ。

玄関の電気を点けっぱなしにして、出勤したのだろうか?

そう考えたが、朝は玄関に電気を点ける必要がないので、その可能性は低いと思われた。


もしかして……。

ふと予想したことに、心が騒めき出す。

桐島さんが帰ってきたのではないかと期待しかけて、慌ててそれを否定した。


メールの返信もないのに、そんな期待を抱いてはいけない。

喜んでしまえば、玄関を開けてただの電気の消し忘れだと判明した時に、また傷ついてしまうから。
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