愛育同居~エリート社長は年下妻を独占欲で染め上げたい~
祖母の仏前で紫陽花荘を終わらせる決意をしたことを謝罪した後は、私は小さなため息をついて立ち上がった。

ここを守れなかった自分の非力さが悔しい。

下宿人たちに、出ていってくださいと話さねばならないことを思えば、心に痛みも覚える。


沈んだ気持ちで台所と居間を往復し、朝食を並べていると、下宿人たちがひとりふたりと階段を降りてきて、声をかけてくれる。

「おはよう、有紀ちゃん。味噌汁は俺がよそうよ」と彼らは配膳を手伝ってくれた。


浴衣姿の桐島さんも降りてきて、私が運ぼうとしていた、大根と鰯の煮物を盛った大皿に手をかけ、「持っていくよ」と廊下で言う。

灰青色の優しい瞳が、気遣うように私を見つめている。


「あ、ありがとうございます……」


祖母の急死からずっと私を支えてくれた桐島さんにも、紫陽花荘を終わらせることをまだ伝えていない。

ここが好きだから『末長くよろしく』と言ってくれた彼に、話すのが怖い。

こんなにも協力してくれたのに、結局やめることになったと言えば、きっとがっかりさせてしまう。

今は優しげに弧を描いているその瞳が、これからは冷たい視線を投げかけてくるのでは……そう考えたら、怖気付く思いでいた。

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