残念系お嬢様の日常
「おい、お前自分で言ったよな? 〝ワサビクリームに当たったら完食しなければならない決まり〟だって」
「うぅ……」
ワサビクリームによって気力を削られてしまったスミレは反論ができないらしく、悔しそうに潤んだ目で桐生を睨んでいる。
けれど、桐生はそんなことお構いなしに優雅に紅茶を飲みながらスミレを見下ろしている。
「食べ物を粗末にすんな。しっかり完食しろよ」
「きぃいいいい!」
スミレ、猫の皮落としてる落としてる。拾って早くかぶって。
泣く泣くスミレが完食すると、桐生は「お前すっげーぶっさいくな顔してんぞ」と容赦ない言葉を浴びせながら眉間のしわを更に深く刻んだ。
桐生は女の子に対してもう少し優しくできないのかな。
桐生が辛辣なことを言うたびに瞳の笑顔が引きつっている気がする。おそらく言い返したいけど、相手が相手だし抑えているのだろう。
「わ、俺もワサビクリームだ! やった!」
今度は天花寺が引き当てたらしい。
けれど、ワサビが好きらしい天花寺はとっても嬉しそうに食べている。それが気にくわないらしいスミレは口を歪めた。