残念系お嬢様の日常



「瞳、お誕生日おめでとう」

「スミレ……」

ふたりがこうして話しているのを久しぶりに見た気がする。

あれから一緒に行動することもほとんどなくなっていた。


「スミレからの誕生日プレゼントよ」

扉か開かれ、入ってきたのは男の人だった。

彼が持っているお皿にはケーキが乗っている。


「な、んで……来てくれると思いませんでした」

「お誕生日おめでとう。瞳ちゃん」


男の人————ハルトさんはそう言うと、ケーキを瞳に差し出す。

真っ白なケーキには艶やかな木苺がたっぷりとのっていて、その中心にはホワイトチョコレートらしきものでつくられた白百合が飾られている。



「これは俺からのプレゼント」

白百合は瞳の花の名だ。

そのことに瞳も気づいたのか、目に涙を溜めていた。



「こんなの諦められなくなる……本当ずるい人」


大粒の涙がぽろりと瞳の頬に流れ落ちる。


その涙にはさすがのハルトさんも少し動揺しているようだった。






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