残念系お嬢様の日常
パートナーとダンスを始める生徒たちに合わせるように私たちも踊りだす。
浅海さんは慣れていないので少しぎこちないけれど、私も得意ではないので気にならない。
こんな風に浅海さんとダンスをするなんて夢に思わなかった。
ふたりでステップを踏みながら、いろいろな話をした。出会ったときのこと、第二茶道室での日々。これからみんなでしたいこと。
雲類鷲真莉亜の、私の日常は彼女たちと出会えたからこそ、色鮮やかで、慌しくて、楽しいものになっていった。
これからもそんな日々が続きますように。
ダンスを終えると、待っていたのはライトグレーのスーツの男だった。
「まさか君に先手を打たれるとは思ってなかったよ」
「言ったじゃないですか。ぐずぐずしていると、奪っちゃいますよって」
浅海さんが珍しく強気で話している相手————雨宮は困ったように眉を下げて笑った。
「それは俺も同意だね。譲が動かないなら、今度は俺がダンスを申し込もうかな。ね、雲類鷲さん」
「えっ、天花寺様?」
雨宮の隣にいた天花寺が私の手を取ろうとすると、雨宮が間に割って入った。
乙女ゲームのような展開に私は動揺して、おろおろしてしまう。
ものすごい注目を浴びてしまっているのだけど、これはどうしたらいいの!