極上恋慕~エリート専務はケダモノでした

「濃さは普通でいい?」
「はい」

 グラスに氷を数個入れて、マドラーでぐるぐると回し、グラスを冷やしている。
 その手付きが綺麗で、万佑はまたしてもぼんやりと見つめた。

 環はミミに万佑の相手を頼まれたが、それは同時に万佑が彼の相手になるということだ。これもなにかの縁だろう。

(こんな気分のまま、新年迎えるのも嫌だし、とりあえず今日は飲もう。飲んで忘れられるのは大人の特権!)

 今夜はこのイケメンサラリーマンの話をつまみに、クリスマス当日を迎えることになりそうだ。
 ウイスキーが氷でさらに冷やされ、ソーダがゆっくり注がれて色が薄くなっていく。


「そんなに切なそうにして、どうしたの? 俺でよかったら話聞くけど」
「いえ、それは悪いので、楽しく飲みましょう」
「そう? じゃあ乾杯」

 白い歯をちらりと覗かせて微笑む彼は、失恋した割に元気だ。
 16連敗ともなると、慣れてくるものなのか……。

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