極上恋慕~エリート専務はケダモノでした

 タクシーに乗ると、暖かさで急激に眠くなってきた。環に想いを伝えられて、ホッとしたところもある。


「中目黒の方に向かってください」

(永縞さんの家に行くんだ……)

 彼の家で一夜を共にするのだと、行き先で暗に分かった万佑は、なにも言わずに彼を見つめる。


「眠そうだね。気を使わないで、少しの間だけど寝てていいよ。着いたら起こすから」

 環は万佑が眠れるように肩を貸し、華奢な手を温めるように握った。

(あったかくて気持ちいい……)

 タクシーの揺れと環の温もり、ワインの酔いも相まって、まぶたがとろんと落ちていく。
 これからの時間を思うとドキドキするはずなのに、彼の隣はこの世で一番居心地がいいと思った。


「――領収書は結構です」

 十五分ほどでタクシーが環の自宅の前に停車した。
 少し渋滞していたが近距離なので、眠ると言っても目を閉じる程度だと思っていたのに、万佑は深く眠ってしまったようで、完全に彼の肩にもたれている。

(参ったな……)

 環は先にタクシーを降りてから反対側に回り、ふたり分のバッグを持ってから、器用に万佑を横抱きにした。

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