極上恋慕~エリート専務はケダモノでした
待ち構えていたのは、優しく微笑んでいる環だった。
大地に傷つけられたはずの心の奥を、そっと撫でるような柔和な表情に、万佑はじっと環を見つめて探る。
(お互い、よく知らないのにな……)
16連敗もしているからには、女慣れしているのだろうけれど、悪い人ではなさそうだ。
初対面で名前で呼んでみたりと、馴れ馴れしいのが気になるが、ずっと堅苦しい雰囲気で飲むのは、上司がいる社内の飲み会だけで十分。
行きつけのミミの店で居合わせた自分のことを、彼はどう思っているのだろう。
なんとも思っていないかもしれないが、ミミに頼まれたとはいえ面倒見が良すぎるような気もする。
「万佑ちゃんが心を痛めてるように、俺だって切ないんだ。どうして上手くいかないのかってね。恋に向かないのかもしれないって諦めるけど、そうもいかないじゃない?」
「……まぁ、そうですね」
語りだした環に、万佑は相槌を打つ。話を続けるものだと思っていたけれど、環はグラスを傾けて口を噤んだ。